2024.06

シェフのこと

TAKAYAMAが⽬指すもの

世界中に愛される街・京都。その中⼼にTAKAYAMAはあります。真っ⽩な空間にしつらえられた⼤きなカウンター。訪れた⼈は、シェフの⼿から数々の料理が⽣み出されるのを⾒ながら、⽬や⾆でそれを楽しみます。今回は、料理に込めた思いを⾼⼭忠司シェフに聞きました。

世界中、ここでしか味わえない感動と⼼地よさを

TAKAYAMA にはメニューブックがありません。提供されるコースは1種類。シェフが組み⽴てた20⽫以上の料理が次々に登場します。

⾼⼭:このスタイルは、私が修⾏していたイタリア・カンパーニャ州のレストラン「クレシオス」(現在は⼆ツ星)のスタイルからヒントを得ました。「クレシオス」で私はスーシェフを務めていましたが、シェフがとにかくアイデアマンで。ポーションサイズを⼩さくして、たくさんの料理を提供するこのスタイルは、スペインのタパスに影響を受けたようです。このスタイルのいいところは、とにかく楽しいことです。

TAKAYAMAで過ごすひとときが、楽しい時間であってほしい。世界中、ここでしか味わえない⾼揚感と⼼地よさを味わってほしい、と⾼⼭シェフは朗らかに話します。

⾼⼭:「楽しい」とひと⾔で⾔っても、いろいろな「楽しい」があります。美味しいのはもちろん、⾒た⽬の美しさ、⾹り、ふたを開けたときの驚き、⼀緒に⾷べる⼈の共感が得られた喜び、料理⼈の⼿さばきを⾒たときの感動…。いろいろなことに刺激を受けてワクワクする、ドキドキする。TAKAYAMA がそんな楽しみでいっぱいの空間になればいいなあと思っています。

TAKAYAMA の主役はなんと⾔っても料理。その⼀⽫⼀⽫の細部に⾄るまで、ていねいに仕上げています。

⾼⼭:私はイタリア北部、中部、南部と3軒のレストランで働いたのですが、その1軒⽬、北部の「ザッパトーリ」で、どこまでも繊細さにこだわる姿勢を学びました。それは、それまで私の中にあった「料理」の概念を全くくつがえすものでした。こだわりには終わりがありません。「もっとおいしく」「もっと美しく」「もっと驚きを」…。どこまでいっても完成がない料理の道は、あそこから始まっているような気がします。

⾼⼭シェフにシェフとしてのポリシーをたずねました。すると、それまで穏やかだった表情が⼀転してキリッと引き締まります。

⾼⼭:緊張感と情熱をもってお客さまに向き合うことでしょうか。京都という⼟地柄、観光でこの街を訪れている⼈も多く、海外からもたくさんお⾒えになります。そこで思うのは「⼀期⼀会」という⾔葉。その⽇のお客さまに会えるのは、この⼀度きりかもしれません。少しでも気を抜いてしまえば、それを挽回するチャンスは⼆度と来ないのです。たった数時間ですが、⼀⼈ひとりのお客さまにとって、最⾼のひとときになるように、⾃分のできる全てを出し切ろうと、いつも思っています。

コロナ禍を経て、さらにその気持ちを強めたという⾼⼭シェフ。この後の展望はどのようなものでしょう。

⾼⼭:新型コロナウイルス感染症の流⾏が収束して、⼈々が同じテーブルで⾷事をする楽しみが戻ってきました。⽇本各地、あるいは世界中から、この場所を求めてきてくださる⼈も増えました。そのことへの感謝の念は、コロナ禍によって、より明確になりました。私のシェフ⼈⽣にとって、あの体験は⾟くもあり、貴重でもあったのです。TAKAYAMAは今、⼆度⽬の船出を始めたばかりとも⾔えます。訪れてくださるお客さまのことを思い浮かべながら万全の準備を整え、最⾼の料理で特別な体験をご提供し、お客さまが店を出られる瞬間までおもてなしに徹する。どこまでも「もっと上」を⽬指して、これからも毎⽇厨房に⽴っていきたいと思っています。

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