2024.08

レストランのこと

サステナブルなガストロノミー

持続可能な開発目標SDGsが掲げられたのが2015年。
世界中の国や企業、人々がこの目標に向かって行動を始めています。
京都・GOOD NATURE STATIONにあるTAKAYAMAの行動をご紹介します。

素材へのリスペクトは「使い切る」ことで還元する

近年、注目されている経産牛。書いて字の如く、お産を経験した牛の肉のことです。TAKAYAMAでは、2020から経産牛を使って料理をしています。

高山:通常、雌牛は1年に一度出産し、およそ10年でその役目を終えると言われています。お産を経験した牛の肉は固く、味も劣るとして、食肉としてはあまり流通していませんでした。けれど近年、この経産牛が、飼育し直すなどすれば独特の旨みが楽しめるとして見直されています。
TAKAYAMAでは、滋賀県草津市のサカエヤから経産牛の肉を仕入れてメインディッシュに使っています。

経産牛の肉

サカエヤとは、独自の方法で熟成肉を生み出すことで知られる精肉店。店主・新保吉伸さんは「肉のアルチザン」とも呼ばれています。

高山:TAKAYAMAでは、オープン当初からイタリアで食べていたような肉々しい肉を探していました。そんな中、新保さんとのご縁をいただきました。今のようにサステナビリティーが注目される前から経産牛に着目し研究されている、その真摯な姿勢にものすごく感銘を受け、ぜひ新保さんの肉を使いたいとラブコールを送ったのです。

新保吉伸さんの経産牛

TAKAYAMAに合う肉を探し続けた結果、サステナビリティーも実現できたのですね。

高山:そうですね、新保さんは単においしい肉を販売しているのではなく、それぞれの店の料理に合うように丁寧にカスタマイズしてくれます。TAKAYAMAの料理を実際に食べてもらいながら、何度もディスカッションを重ね、現在のようなしっかりした食感と肉の旨みが感じられる肉になりました。
私は、新保さんから肉が届くたびにワクワクして料理をしますし、新保さんの経産牛を使ったメインディッシュはTAKAYAMA自慢の一品です。いい料理ができるうえに、サステナビリティーにも貢献できる。どこにも負荷をかけていないことで、とても気持ちよく料理ができています。

田んぼでの草取り

調理中に出る端切れも活用していますね。

高山:ええ、母が私の地元・広島で子ども食堂を手伝っているのですが、トリミングする際に出る肉の切り落としは冷凍して送っています。カレーや肉じゃがなどに使っているようで「子どもたちが喜んでいたよ」と聞くとうれしくなりますね。

子ども食堂

TAKAYAMAでは食材を捨てず、堆肥として活用できるようにもしています。

高山:これは当店が入る複合商業施設GOOD NATURE STATIONの取り組みです。全館から出る野菜クズなどはすべて共用のコンポストに集められ、堆肥になります。その堆肥は滋賀県近江八幡市にある協力農園に持ち込まれ、有機米などの生産に使われています。

堆肥として活用される野菜クズ

高山:初夏にその農園で田んぼの草取りを手伝ってきました。当店では使用していませんが、GOOD NATURE STATION内の飲食店ではこの田んぼで穫れた米を使っているお店もあります。

田んぼでの草取り

サステナブルな循環が見事に生まれています。

高山:はい、とてもうれしいことです。お客さまにも、ご興味があればお伝えしたいので、畑や田んぼにも積極的に足を運ぶようにしています。私自身、食べることが大好き。食材への愛情とリスペクトは人一倍だと思っています。今後も料理のクオリティーを上げながら、どこにも負荷をかけずにやっていく方法を模索していきたいと考えています。それが実現すれば、食べていただくお客さまにとっても、作り手である私たちにとっても、さらに心豊かな食事になることでしょう。

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